上司から期待され、高いモチベーションで仕事に取り組む社員は、比例して高い生産性を維持しています。チームの生産性を高めるためには、部下のモチベーションをいかに高い位置でキープするかが上司にとって重要なマネジメントになります。
これから紹介する「ホーソン効果」は、ビジネス書でもよく目にする心理学を利用したマネジメント手法の1つです。私も人間関係が上手くいかない時、ホーソン効果を思い出すことがあります。
当記事では、ホーソン効果の概念とホーソン効果をどのように活用すれば部下のモチベーションをアップさせることができるかをご紹介していきます。
- ホーソン効果とは?
- ホーソン効果が発見された心理学の実験
- ホーソン効果とピグマリオン効果の共通点や違い
- ホーソン効果とプラセボ効果の共通点や違い
- ビジネスに活かすホーソン効果の活用法3選|部下のモチベーションを引き出す具体策
- ホーソン効果を活用するうえでの注意点
- マズローの欲求5段階とホーソン効果の関係
- テレワークでもホーソン効果を意識する!
- まとめ:さっそくホーソン効果を取り入れよう
ホーソン効果とは?

ホーソン効果とは、「誰かに見られている」という意識が働くことで、仕事に対する集中力や成果が向上する心理的な現象のことです。人間は、他人から注目されると期待に応えたい感情を持ち、仕事に前向きに取り組むことが心理学でも提唱されています。
このホーソン効果が発揮されると、個人のモチベーションが上がり、結果的にチーム全体の生産性向上にもつながります。部下のモチベーションが高ければ、上司のマネジメントが機能しやすくなり組織力向上につながります。
「そんなにうまくいくの?」と思うかもしれませんが、実際にモチベーションが高い社員を見れば分かります。周りからの期待値を感じ取れる社員は、自分が目指すべき目的が明確になっています。目的が明確だから目標が現実的になり、モチベーションを保つことができているのです。
さて、ホーソン効果はどのように発見されたのでしょうか?
ホーソン効果が発見された心理学の実験
ホーソン効果の発見は、マネジメント理論において大きな転換点となりました。1920年代にウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた実験により、「注目されること」が生産性に影響を与えることが明らかになったのです。

ホーソン工場での実験は成功しました。6名の女性作業員を集めて継電器の組み立てをしてもらい、照明を明るくすると生産性は向上しました。ならばと、他のパターンでも期待効果を得られるか検証するため、実験範囲を広げていきました。
- 照明を徐々に明るくしていったらどうなるか?
- 休憩時間を多めに取るようにしたらどうなるか?
- 給料をアップさせてみたらどうなるか?

実験結果は、全てにおいて生産性が向上しました。しかしここで1つの疑問が生じます。
どの取り組みにおいても生産性の向上は一定だったのです。
この実験がホーソン効果の原理が立証されるきっかけになったのです。

検証中は、ハーバード大学の教授やウエスタン社の経営陣が作業者の行動を観察しています。作業者にとっては「偉い人たちに注目されて、仕事ができない人間と思われたくない!」という感情が生まれて、照明が明るかろうが暗かろうが、『注目されること』で生産性が向上したのです。
注目されることで成果が上がるホーソン効果が発見された瞬間です。
ホーソン実験が行われるまでのアメリカでは、人のマネジメントにおいて科学的な管理法が正しいとされていました。しかし、ホーソン効果が発見されてからマネジメントの考え方が大きく変わります。1940年代に入ると、マズローやマグレガーといった著名人が「仕事にはやりがいが大切だ」と提唱していくことになります。
身近で例えると、授業参観で親からの期待に応えようと頑張る小学生はホーソン効果が働いています。他にもスポーツの試合でアウェイよりもホームの成績の方が良くなるのは、ファンの期待によるホーソン効果の一つだといえます。
ホーソン効果とピグマリオン効果の共通点や違い
ホーソン効果と比較される心理学的効果にピグマリオン効果があります。ピグマリオン効果とは、上司と部下、先生と生徒といった上限関係の中で、上の立ち場にある人が下の立場に期待することで成果が上がる方法です。
ピグマリオン効果を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
ホーソン効果とプラセボ効果の共通点や違い
プラセボ効果もホーソン効果とよく比較される心理学の考え方です。ビジネスで用いるプラセボ効果は、利用する人に効果を思い込ませることでパフォーマンスを発揮することを指します。「この薬はよく効く」と思って飲むと風邪が治りやすく事例があります。これは自分に言い聞かせることで、体がプラスに反応しているのです。
ビジネスに活かすホーソン効果の活用法3選|部下のモチベーションを引き出す具体策

ホーソン効果をうまく取り入れることで、部下のやる気を引き出し、組織全体の成果を上げるマネジメントが可能になります。以下の3つの方法を実践してみましょう。部下との人間関係を良くしたい上司の立場の人は必見の内容となっています。
①仕事の進捗を見守りながらサポートする
部下に任せた仕事の進行状況を上司が定期的にチェックし、必要なタイミングでフィードバックを行うことで、ホーソン効果による意欲向上が期待できます。
100がゴールだとしたら、20で一回、50で一回、90で一回と仕事の進捗度合いをチェックしてあげるのです。この時注意しなければならないのは、上司としての意見を押し付けないことです。あくまで、軌道修正を目的にしてください。
- 仕事のゴール・目的を伝えるマネジメント
- マイルストーンに勘を働かせるマネジメント
部下は上司に見守られている安心感と期待に応えなければという使命感が働き、モチベーションが高まります。最終、ゴールまでたどり着いた時には労いの言葉をかけてあげてください。ここまで取り組んで初めてホーソン効果が活きます。
部下に注目して見届けてあげることは、上司として当然のことなのですが、実務を持っているプレイングマネージャーであれば部下の仕事を全て見届けるのは容易なことではありません。時間をうまく見つけ出し、自分が期待していることを部下に伝えてあげるシーンを作りましょう。
②高い基準のチームに配置する
周囲に優秀な社員がいるチームに部下を配置すると、自然と期待値が高まり、モチベーションが向上しやすくなります。環境が人の行動を左右するという心理を活かしたマネジメント法です。
もし、部下の周りに遅刻をよくする社員が多いチームに所属していたら「自分も少しくらいはいいか」と時間にルーズになります。逆に、周りが始業の30分前に出勤してくるチームに所属すると、部下も会社に出勤してくる時間が早くなるものです。
ホーソン効果は、周りからの期待によって効果を発揮するため、上司に限らずチームメンバーからの目線や環境を利用できます。
周りに仕事ができる社員がいれば、引っ張られて部下が成長しやすくなります。部下を期待通りに成長させるためには、個人の性格や強み、将来の目標などを上司が把握していなければなりません。適材適所で体制を組み、更にチームも部下も成長をさせることがマネージャーの使命です。
ちなみに、ダイエットもホーソン効果が働く事例です。太っている人たちに囲まれていたら、自分はまだ大丈夫とダイエットする気になりません。自宅でダイエットに取り組むよりもジムに行った方が同じ目標を持った人たちに注目されて、ダイエットに対してやる気が出ます。
③小さな成功体験を積ませる
部下が自分の成長や成果を実感できるよう、段階的に達成可能な目標を設定することで、「見てもらっている」「期待されている」という意識が芽生えます。
例えば、「この資料の整理だけお願い」「この顧客対応だけやってみて」といった小さな仕事でも、達成すれば自信になります。
それを上司がしっかり認めることで、ホーソン効果が生まれやすくなり、さらに高いモチベーションへとつながります。
ホーソン効果を活用するうえでの注意点
ホーソン効果には大きなメリットがありますが、万能ではありません。次のような点に注意しましょう。
監視にならないように注意する
「見ている」と「監視されている」は大きく異なります。細かすぎるチェックや、無言のプレッシャーは逆効果になる恐れがあります。あくまで「あなたに関心を持っている」というスタンスで接することが重要です。
継続的に関心を持つこと
一時的に注目しても、すぐに関心を失えば部下は落胆し、「口だけ」と受け取られることもあります。定期的な1on1やちょっとした声かけなど、継続的な関心が信頼関係を築き、ホーソン効果を持続させます。
マズローの欲求5段階とホーソン効果の関係
ホーソン効果が働くのは、生理的欲求や安全の欲求が満たされている時です。アメリカでホーソン効果が実験された時も、第一次世界大戦後のアメリカにおいて経済が好景気の時代背景があります。
マズローの欲求5段階における生理的欲求や安全の欲求といったピラミッド構造の最下部が満たされている状況だからこそ、ホーソン効果が発揮したと考えることができます。
テレワークでもホーソン効果を意識する!

ホーソン効果はリモートワークのビジネス環境でも活かすことができます。
2019年よりリモートで仕事ができるように環境を整備している企業が急増しています。見られていることで効果が働くホーソン効果は、リモートのビジネス環境だと不利になるのか?と聞かれるとそうとは言い切れないと思います。
リモートで離れているからこそ、ちょっとした声掛けや気にかけてあげる行動で、期待された部下はモチベーションが高まります。
上司は、テレワークだからこそ、コミュニケーションを密に取り、良い人間関係の構築を意識していきましょう。
まとめ:さっそくホーソン効果を取り入れよう
ホーソン効果は「注目されることで人は頑張れる」というシンプルな心理法則です。上司が「ちゃんと見ているよ」「あなたの成長を期待しているよ」と伝えるだけで、部下のやる気や行動は大きく変わります。
ぜひ明日から、部下への「適度な注目」と「前向きなフィードバック」を意識してみてください。それだけで、チームの空気も、生産性も変わっていくはずです。