昔にビジネス雑誌の記事で見たのですが、日本の上司はとにかく「話しすぎる」ようです。私の実感では今もなお日本の上司は部下よりも自分が話している時間が長いように感じます。
上司が喋りすぎると部下の成長を止めてしまうことがあります。
今日は、話さない上司が部下の成長を促す理由についてお伝えします。
上司が話し過ぎている実態

部下との面談において、欧米では上司が話す割合は20〜25%程度とされているのに対し、日本では50%を超えるケースが多く報告されています。
この違いは、組織文化やマネジメントスタイルの差に由来するものですが、実際に日本の上司は自分が話す時間が長くなりがちです。
- もしかすると、自分もつい話し過ぎてしまっているかも
- いや、部下の話をしっかり聞くように意識している
上司の立場として、自分の姿勢を振り返る機会は重要です。「部下の自主性を尊重している」と思っていても、現実には話の大半を上司が担っていることもあります。
特に沈黙の時間に対する不安から、無意識に話し続けてしまう傾向があります。私自身も以前は、面談中に沈黙が続くと気まずさから言葉を重ねてしまっていました。しかし、今では沈黙を恐れず、部下が自分の考えを整理する時間として尊重するように心がけています。
部下がどう感じているかが大事

「自分は話し過ぎていない」と上司が感じていても、部下にとっては発言の機会が与えられていないと感じることがあります。上司の意図や自己評価よりも、部下がどう受け取っているかがコミュニケーションの本質です。
チームや部門を率いる立場として、仕事への責任感や部下への思いが強いのは当然ですが、その思いが一方通行になっていないかを確認することが大切です。どれだけ誠実に部下を育てたいと考えていても、伝わっていなければ意味がありません。
上司のアドバイスは時に役立ちますが、部下の内面や価値観を知るには「聴く姿勢」が不可欠です。目先の成果よりも、長期的な成長を支援するために、丁寧に部下の声に耳を傾けましょう。
上司が話しすぎないようにするコツ

上司が会話をコントロールするための実践的なポイントをご紹介します。これらを意識することで、部下とのコミュニケーションが円滑になり、マネジメント能力の向上にもつながります。部下も自らの考えを持ち、成長しやすい職場環境が整うでしょう。
指示を出さずに考えさせる
急を要する案件以外では、できるだけ上司が直接的な指示を控えることが効果的です。上司が全てを決めるのではなく、「方向性」や「目標」を共有したうえで、部下に考える余白を残すことが重要です。
部下の自立を促すには、あえて細かい指示を出さないという選択もあります。仕事の進め方について部下に主導権を持たせることで、創造性や責任感が育まれます。まずは一度、指示を止めて部下からの相談を待ってみるくらいの余裕を持ってみましょう。
意見をすぐに判断しない
上司にとってスピード感のある意思決定は大切ですが、部下の意見を一旦持ち帰ることで、より客観的な判断ができる場合もあります。
「なるほど、その意見は興味深いね。一度、持ち帰ってじっくり考えてみるよ」
このように伝えることで、部下は自分の意見が真剣に受け止められていると感じ、信頼関係が深まります。即答を避けることで、上司自身の思考の幅も広がります。
呼び出しではなく相談を持ちかける
部下との1on1ミーティングや個別のやり取りでは、「呼び出す」のではなく「相談する」姿勢が大切です。
「少し話がある」ではなく、「相談したいことがあるんだけど」といった言葉に変えるだけで、部下は緊張感を和らげ、自分の意見を話しやすくなります。
上司と部下が対等に意見交換できる関係性を築くことが、心理的安全性の高いチームづくりに直結します。
マネジメントをさらに高めるためのヒントは、以下の記事も参考にしてみてください。
喋らない上司の勘違い
「話さないことが良い上司だ」と誤解してしまうと、部下との信頼関係が築けず、逆効果になる可能性があります。「話しすぎない」と「コミュニケーションを取らない」はまったく別物です。
必要なタイミングで適切に言葉をかけること、部下に寄り添う姿勢を示すことは、信頼を得るうえで欠かせません。「黙ること」が目的ではなく、「部下の成長を引き出すこと」が本来の目的であることを忘れてはいけません。
関心のなさと受け止められるリスク
話しかけても反応が薄い、意見を出しても無視される――こうした上司の態度は、部下に「自分に興味がないのかも」と思わせてしまいます。上司の無言が、冷たい印象や無関心として伝わることもあるのです。
本当は部下の考えを尊重したくて黙っていたのに、誤解されては意味がありません。沈黙の中にも「聞いているよ」という姿勢やアイコンタクト、うなずきなどのリアクションを意識してみましょう。
コミュニケーションの質を高める
喋る量を減らすことで余裕が生まれ、部下の声に耳を傾けやすくなりますが、その分、話すときは意図を明確にする必要があります。曖昧な指示や投げかけは、部下を混乱させてしまいます。
「この時間は部下の話をじっくり聞く」「この場面では自分の考えを端的に伝える」など、コミュニケーションの質を意識的に高めることが重要です。
まとめ:話さない上司が部下の成長を促す理由
上司があえて話す量を減らすことで、部下が自分で考え行動する力を身につけることができます。
自分で考え動く部下は、指示待ち人間にならず、上司の顔色を伺うことも減ります。
部下が自らの意見を自由に発言できる環境が整うことで、主体性や責任感が育ち、チーム全体のパフォーマンスも向上します。
上司は成長した部下の成果や変化をしっかり認め、適切にフィードバックを行うことが大切です。話さないこととコミュニケーション不足は異なります。部下がたくさん話すチームこそ、組織力の高いチームと言えるでしょう。