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360度評価は改革を起こすのか?ハラスメントのジレンマ

360度評価


様々なハラスメント用語が増えていく昨今ですが、興味深い記事が日経新聞に掲載されていました。

厚生労働省の職員に対するアンケート調査において
46%の職員が入省からこれまでにハラスメントを受けたことがある
と回答をしたそうです。

引用:2019年12月28日 日経新聞より

これは一般企業と比較してもかなりインパクトのある数字です。厚生労働省の職員ですから、上司も部下もいわゆるエリート集団です。

またハラスメントについて法を整備する国の機関においてハラスメントが横行していては本末転倒と言えます。

そこで、国は課長職以上の方に360度評価を取り入れたようですが、私はこの制度に対して疑問が残りますね。今日は、360度評価におけるハラスメントのジレンマについて書きたいと思います。

360度評価の意義

360度評価とは?

360度評価とは、部下が自分の上司を評価をする制度のことです。360度ですから、自分の部門の上司だけに限らず、全社の社員が評価し合う制度だと思ったらいいでしょう。

360度評価のメリット

本来会社における評価とは上司が部下に対して行うものです。一方向からだけの評価だけでは、上司の性格によっても評価に差が出やすいデメリットがあります。 

360度評価のメリットは、隠れた功績をしっかりと評価に反映させることができるようになります。

   ◎A部長

    └◎B課長

      └◎C社員

という組織になっていて、A部長から見たB課長は「あまり部下をマネジメントしていない課長」と見えていたとします。

しかし実際には悩みを抱えているC社員に対して業務時間中ではなく、定時後に居酒屋に連れていき、正しい方向にマネジメントをしていました。

この事実に対してA部長は知らないわけです。C社員が成長を実感しているのであれば、C社員がB課長を評価することができるようになります。

様々な視点で評価することができるメリットが360度評価にはあります。

部下から上司へのパワハラ

冒頭の記事に戻りますが、360度評価を取り入れることで、パワハラを抑制することができると国は思ったようですね。上司が部下にパワハラをしていると、部下からの評価はどんどん下がっていくわけです。

部下からの悪い評価を始めて聞いた上司は「自分は部下に慕われていた」と思っていたため、大きなショックを受けて出勤できなくなった人もいるようです。

職場からパワハラが無くなることは素晴らしいと思うのですが、360度評価がパワハラの抑制になるかと言われると、私は少し疑問に思っています。

本来評価とは、経験豊富な上司がするものであることが鉄則だと思っています。部下の目を気にして上司が叱らなくなったり、指示を出しにくくなったりすることは企業活動の弊害でしかないと思うのです。

部下は気持ちよく仕事ができるようになる半面、上司へのプレッシャーをうまく利用することが考えられます。SNSに慣れている若者は、情報を脚色したりフェイクにして流すことに抵抗がありません。

「あの人は仕事ができないからね」とか「あの上司、口だけだよね」といった情報はあっという間に社内に流れるようになります。

事実無根の情報であっても360度評価を取り入れることで正当化されてしまい、部下が上司に対するパワハラを行うようになることを危惧しています。

パワハラは上司から部下に対してだけではありません。部下が上司に対してパラハラを行ったことが認定された過去の判決事例もあります。

ハラスメントのジレンマ

これからも○○ハラスメントという言葉は増えていくことでしょう。ある事象に対して法律やルールで縛ることをすると、違った弊害が他で発生するものです。

パワハラを止めるために360度評価を取り入れたとしても、部下から上司へのハラスメントが新たに発生するのでは意味がありません。

こういったハラスメントのジレンマにこれから企業は悩まされていくはずです。私の考えでは、国のルールに従うためにどうするかを考えるだけでなく、その会社独自で「社員のモラルを教育する場」を増やしていく必要があると思います。

働き方改革や生産性向上の背景で、ビジネスマンとしてのマインドを重要視する企業が生き残っていくのではないでしょうか。