部下の様子がおかしい時は、部下がメンタル不調を引き起こしている可能性があります。 部下のメンタルをケアすることは上司の重要なマネジメント業務です。
会社はチームの集まりで機能しています。部下のメンタル不調でチームの生産性が低下することは、上司として防がなければなりません。早めに部下のケアをしておかないと、成長を止めるだけでなく、休職や退職という最悪のケースに陥ってしまうことも考えられます。
ここでは、部下の様子がおかしい時に、上司がすべきマネジメント方法について解説します。
部下のメンタル不調に気づくためのサイン
部下の様子がおかしいと気づくためのサインを見逃さないようにしましょう。普段とは明らかに違う態度や行動に早く気づくことが大切です。
部下の様子がおかしい時の代表的なサインをお伝えします。
- コミュニケーションを取ろうとしなくなった
- 笑顔のシーンを見る回数が減った
- 勤務状況が悪くなった(遅刻が増えた)
- 仕事の進捗が悪くなった
- 食欲がなくなった
- 返事をする声が小さい、または遅くなった
これらのサインを並べてみると、どれも上司がマネジメントする上で注意すべきポイントだと分かります。部下の様子がおかしいことに気づくスキルは、マネジメントスキルに直結します。部下の様子がおかしい兆候を見逃さないよう意識を高めましょう。
定期的に部下の様子をチェックしていると、意識しなくてもメンタル不調のサインを読み取れるようになります。普段からアンテナを張らなくても部下の様子を読み取れるとベストです。
コミュニケーションを取ろうとしなくなった
コミュニケーションは仕事に関することだけとは限りません。普段の雑談回数の減少もコミュニケーションに何らかの要因があるといえます。
部下から上司に対してコミュニケーションを取ろうとしなくなったときは、メンタル不調のサインです。上司とコミュニケーションを取ることで新しい課題や悩みが生まれることを恐れているのです。
中には上司に相談をすることで「上司に迷惑をかけてしまうのではないか」と考える人もいます。
コミュニケーションの減少によって部下の思いを吸い上げることもできなくなり、メンタル不調の悪循環に陥ってしまいます。
部下の笑顔を見る機会が減った
部下がストレスを貯めこんでいると、生活の中で面白いと感じる機会が減少します。そのため、仕事だけでなくプライベートにおいても笑顔が少なくなっていきます。
会議中や面談の機会で笑顔がなくなったことに気づくこともありますが、普段の行動や振る舞いも確認して、笑顔のシーンが減っていれば要注意です。
マスクをしていると、表情が読み取りにくくなります。部下がテレワーク中で一人の場合は、マスクを取って表情が分かるようにしてもらうといいでしょう。
勤務状況が悪くなった
勤務状況が悪くなったらメンタル不調のサインです。
部下が仕事に良い緊張感を持っている時は、朝も早く起きることができます。緊張感がストレスに変わってしまうと、夜に眠れなくなったり眠りが浅くなったりします。結果、遅刻が増えてしまうのです。
残業が増えることもメンタルが弱っている予兆と言えます。日中に仕事に集中できず、仕事が終わらないため残業になっているパターンです。
仕事の進捗が悪くなった
部下の様子がおかしいことに気づくのは、仕事の質やスピードが落ちた時です。モチベーションが低い状態では、仕事の進捗がよくありません。部下の仕事の進みが悪い時は、精神的に悪い状態になっている可能性があります。
「なんでこんなに仕事が進んでいないんだ?」と頭ごなしに追求するのではなく、部下の様子をよく観察して進捗状況を把握することが大切です。
食欲がなくなった
人間は誰しもメンタル不調を起こしている時は、食事を摂る量が減ります。食欲がなくなっている部下がいれば、様子がおかしいなと感じるようにします。
たまに外でのランチに誘ったとき、断られるようになるのも注意です。ランチタイムは気持ちをリフレッシュする時間でもあります。ランチタイムを楽しめていない部下は、気持ちの切り替えができていません。
今は外食の機会が減っていますが、感染症対策を徹底して、少人数でのランチの場を時々作ってみるといいでしょう。
返事をするときの声が小さい、または遅くなった
部下に話しかけた時、返事の声が小さい時には「部下の様子がおかしい」と感じましょう。メンタル不調を起こすと、声が小さくなる傾向にあります。返事をすることが嫌なのではなく、部下が自分に自信をなくしていることで声が小さくなりやすいのです。
また、反応が悪くなった時も注意が必要です。「これお願いね」と部下に仕事を頼んだ時に、少し間があって「・・・はい」と返事が返ってくるようなシーンです。
挨拶の声の大きさも注意して聞くようにしましょう。上司である自分から挨拶の声は大きくするように心掛けると、部下の様子がおかしいことに気づきやすくなります。
部下の様子がおかしい時の対処法
部下の様子がおかしい時には、どのようなマネジメントを心掛けたら良いのでしょうか。部下の様子がおかしい時の対策についてまとめます。
①時間を作ってあげる
まず、上司が部下のために時間を作ってあげるようにします。
部下の様子がおかしい時には、他の仕事よりも優先順位を高くして面談の時間を作ります。
メンタル不調の可能性がある部下と面談をする際には、特に注意すべきポイントがあります。
- プライバシーが守れる環境をつくること
- 自分の意見を話すよりも部下の意見を聞くことに注力すること
- 部下の意見を否定しないこと
部下は、上司が自分のために時間を作ってくれたことで、まず一度落ち付きます。話したくてもなかなか話せないようなことを引き出すようなコミュニケーションが重要です。
部下と面談していることを周りに悟られないように気遣うこと、自分の意見を押し付けないようにすること、そして部下の意見を否定しないようにします。すぐに回答を見つける必要はありません。的確な答えがすぐに見つかるとは限らないのです。場合によっては、複数回の面談を繰り返して部下の本音を聞き出すようにします。
「何かあったのか?」という質問に対してすぐに答えが返ってくるとは限りません。じっくりと時間を作り、雑談を交えながら部下の悩みを聞いてあげるようにしましょう。
部下との面談が憂鬱な人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
②物理的な環境を変えてあげる
部下の様子がおかしい時には物理的に環境を変えてあげます。
いくら話を聞いてあげたとしても環境が変わらなければメンタルケアはできません。
仕事の量を減らす
仕事のタスクが多いと気持ちを圧迫してしまいます。今の仕事量が適切だったとしても、一時的に仕事の量を減らしてあげます。
部下の様子を観察しながら、前向きに取り組めるようになれば仕事の量を徐々に戻してあげます。その分、他のメンバーの負担が増えますので、チームの理解を得るマネジメントを心掛けます。
メンバーを変える
部下の悩みのほとんどが人間関係によるものです。自分も含めて、周りとの人間関係をリフレッシュできるように環境を変えてあげます。
人間関係の悩みを上司に話しにくい場合があります。仲の良い同僚にお願いして、悩みの種を見つけ出してもらうのも良い方法です。
期限を設けて約束する
部下の様子がおかしい原因が分かったとしてもすぐに解決できるとは限りません。話を聞いてあげるだけでも部下は安心をしますが、本質的に変えるためには行動を起こす必要があります。
仕事の量を減らす場合もメンバーを変える場合も、すぐに解決できない場合は期限を設けて約束します。いつまでに対応してくれるかが分かるだけで、部下のメンタルはかなりケアされます。
③専門家に相談する
部下の様子がおかしい時に、産業医に相談をする方法があります。会社に直接所属していない第三者と部下が話すことで、部下の本音を聞き出しやすくなります。さらに産業医はメンタルケアのプロなので、過去のメンタル不調事例と照らし合わせて部下だけでなく上司の振る舞いに対してもアドバイスをしてくれます。
うつの症状がある場合には、専門医への診断を進められることになります。その際には、専門医に丸投げするのではなく、部下と一緒に解決に向けて取り組むようにしましょう。
まとめ:部下の様子がおかしい時にすべきマネジメント
部下の様子がおかしい時には、早めに行動することが大切です。
行動を起こした結果上手くいかないこともあるでしょう。しかし、部下とのコミュニケーションを恐れていては組織力向上にはなりません。自分だけで分からないのであれば、遠慮なく周りに相談するようにしましょう。ただし、周りに相談する際には、部下のプライバシーが守られることに注意します。
部下のメンタルケアができた時、マネージャーとしてまた一歩、成長することができます。そしてメンタルケアは、1回で終わりではなくマネジメントの中で継続的に取り組むべきだと思います。
私がマネジメントしてきた20年を振り返ると「あの時に対策が取れていれば」と後悔することが多くあります。マネジメント経験が豊富な人でも部下の様子に気づくことができず、手遅れになってしまうことがあります。部下の様子がおかしければ、よく観察して行動を起こすようにしていきましょう。